占星学は医学と似ていて,直接カウンセリングをする占星術師は“臨床医”にあたり,データを整理し統計的な処理をして,新しい法則を発見しようとする占星学者が“研究医”にあたるでしょう。
今の日本の占い界は現場での“臨床医”が多くて,本格的な“研究医”が極端に少ないように思われます。現場ではすべて違う個性の人間がそれぞれ千差万別の相談をするわけで,占星術師はデータや法則だけでない直感的な判断も当然必要になります。
ただ,判断の基準となる伝統的な法則が現代社会と合わない面も出て来ています。占星学は実在する太陽系の惑星の位置を診断データとして使うので,その解析法,診断法についてはこれからも新しい理論が出てくる余地があるのです。そこに占星学が科学として扱われる分野も出てくるでしょう。
そういう意味で客観的統計的データの出せる研究者クラスが,日本でももう少し増える必要があると思います。それがひいては現場の方々の助けにもなるでしょう。伝統的な占星学の問題点を述べてみます。
◆アスペクトで『180度,90度,45度』などを凶座相,『120度,60度』などを吉座相とみなす。⇒中国の故事に『塞翁が馬』の話があるように,吉事とみえることが凶事の元になり,凶事とみえることが吉事の元になることもあります。占者はアスペクトについて単純に吉凶を述べるのはどうかと思います。
歴史的に偉業をなした人間,現代の著名人の中でもいわゆる凶座相が目立つケースが多々あります。凶座相の強い人は,努力家で人とぶつかっても自分の意志を通すタイプであり困難に強いようです。それに対して吉座相が強い人は,楽な道を選びやすく何かあったときに人と協調的に生きようとするタイプであり,トラブルには概して弱いようです。その結果としては,前者は敵が多く自分で道を切り開かなければならず,後者は人に好かれるので人の援助を受けやすいと言えるでしょう。
英語で凶座相を“hard aspect”,吉座相を“easy aspect”と呼ぶのはかなりニュアンスが近いと思われます。
占星術は19世紀までは主に貴族や為政者が利用したものですから,戦い反抗する人間は“凶”に見え,穏やかで従順な人間は“吉”に見えたのだと思います。しかし現代,特にこれからの“水瓶座の時代”は,しっかりした自分の考えと創造力をもって,困難があろうとも自分を表現していく人間が多数必要であり,本人の生き甲斐も出てくるでしょう。
もちろん,他人の個性も尊重することになりますから,ぶつかるだけでなく協調する場合も出てきます。
“easy aspect”と“hard aspect”をそれぞれ建設的に生かすことが大事になります。
◆基本要素の星に関しても,木星,金星,太陽,月を“吉星”とみなし,土星,火星,天王星,海王星,冥王星を“凶星”とみなす。⇒星はそれぞれ個性をもち,人間からみてプラスとみえる面,マイナスとみえる面がありますが,すべて必要な要素です。確かにいわゆる“凶星”が人間に及ぼす“ダメージ”は大きい場合があるので注意は必要ですが,それが人間を成長させる場合もあります。“吉星”の“凶意”はみえにくいですが,人間を堕落させる場合もあります。要するに,星を吉凶の二値でみるのではなく,それぞれの性質を建設的に使うことが重要です。
◆マイナーアスペクトと呼ばれる『72度,144度』,『51.43度,102.86度,154.29度』などの影響力は弱いとみたり,まったく考慮しない。⇒72度は360度を5で割った数であり,51.43度は360度を7で割った数であって,5と7は『数霊学』的にも重要な数であり,私の鑑定経験やデータ解析でも影響力の強い重要な角度です。イギリスの占星学者ジョン・アディー(John Addey)氏の提唱された新しい『ハーモニクス』理論においても“ハーモニクス5”と“ハーモニクス7”のチャートは重要なチャートです。
◆上と関連しますが,いわゆる“メジャーアスペクト”,“マイナーアスペクト”のオーブ(許容度)がそれぞれにおいて固定的で,また概して広めにとっていろいろな説明をしやすくする。さらに診断の際,アスペクトをとるかとらないか二値的で,アスペクトに対する正確さの考慮が弱い。⇒大きなアスペクトはオーブを広めにとり,小さなアスペクトほどオーブは狭くとるのが合理的ですし,私の鑑定経験からも合います。また,“メジャーアスペクト”,“マイナーアスペクト”に関わらず,正確なアスペクトのものからプライオリティー(優先順位,重みづけ)をつけるのが当然でしょう。(この考えを発展させて“共振パワー値”が生まれました。)